リバイバル上映を“今”だからこそ望む! 一発の銃弾すら発射することができない。助けを求める仲間の命すら救うことができない。押し付けられた歪んだ憲法を未だ後生大事に守ろうとする国家に弄ばれる自衛隊員の断末魔。冒頭の戦闘シーンからそんな“現実”を抜身で突きつけてくる演出に引き込まれる。
「警察官、自衛感として守ろうとしてるものってなんだろうな?平和、俺たちが守るべき平和…だがこの国のこの街の平和とはいったいなんだ?」
押井監督の描くTOKYOウオーズは、とても10年以上の前の物語とは思えない。むしろ今だからこそ迫るものがある。それはつまり、時代が追いついたというより、何も変わってはいないって事なんだろうけれど…。
「欺瞞にみちた平和と真実としての戦争」
よく言われる平和とは戦争の逆であると。ほんとかよ?そんな単純なもんか?単に戦争でないと言うだけの消極的で空疎な平和。私利私欲にまみれた利己的な平和。去勢された無気力な平和。そんな平和に何の価値があるのか?そんな平和でもイイと言うのか?
「始まってますよとっくに。そのはるか以前から戦争ははじまっていたんだ。」
警察から自衛隊に治安維持が移り、首都圏に戒厳令が発せられる。が、いつもと変わらない日常上の風景と街並みに溶け込む自衛隊の戦車。パニックになる市民や、抗議をするような市民は描かれない。変わらない市民。ひたすら傍観者。戦争さえもリアルに感じられない?
「結局最初の法制がとどろくまで誰も気づきはしなかった。いや、もしかしたら今も。」
いつか気づくのか?いつかだれに気づかせられるのか?その時には遅いんじゃないのか?もう取り返しがつかないのでは?その時が来た後じゃ誰も何もできやしないんだろ?
「この国はもう一度、戦後からやり直すことになるのさ。」
日本映画界においては、扱うテーマとメッセージ性という点で、実写よりもアニメのが遥かに鋭利だ。が、「戦後」という意味すら知らない、教えられてもいないし考えようともしない人間が大半をしめている今の日本で、この言葉がどこまで響くんだろう…。どれだけの人間が立ち止まる事ができるのだろう…。振り返り学び取ることができるのだろう…。
「もう少し、見ていたかったのかもしれんな。」
この国にまだ希望はあるのか?
機動警察パトレイバー2 the Movie(1993)
監督:押井守
出演:古川登志夫, 冨永みーな, 大林隆介, 榊原良子