罪人たち

罪人たち

ライアン・クーグラー監督の新作。バンパイアというトッピングで1930年代の黒人社会の暗部と解放を描いてる。やたら評価が高い作品だったから構えて観たけど納得の面白さだった。デルタ・ブルース→ソウル→ファンク→ヒップホップへの音楽史を一つのロングテイクで描くシーンは圧巻。細部の時代考証も素晴らしいし、ラストシーンは唸らされた。自由とは。生きるとは。単なるホラーでもアクションでもミュージカルでもない多層的な野心作だよ。

ここからネタバレあり!

とにかく1930年代の南部アメリカ、ミシシッピのクラークスデールの街並みの再現度が凄い。この街からブルースが生まれたんだなと思わせる空気感たるや。雑貨店を営む中国人夫妻も最初は違和感あったけど、調べてみたら当時中国系コミュニティがあって主に雑貨店を経営してた史実があるんだとか。リアルだ。

バンパイアは、搾取者の比喩なんだろう。血を吸う存在として、黒人労働力を搾取し続けた構造を可視化してる。そして、バンパイアの始祖・レミックがアイリッシュダンスを踊り、他のバンパイアが同期するのは、個性や自由を奪って均質化することの比喩なのかなと。だとしたら上手い。

話題になった音楽とダンスのシーンも圧巻。映像美はもちろんだけど、ブルースを根っこにしたアメリカの黒人音楽の系譜をこんな見せ方するなんて。サミーの特殊能力という設定も効いてる。ただ、中国民謡が混ざってきたのはさすがに蛇足だったと思うな。惜しい。

ラスト、スタックとメアリーが訪ねてくるけど、どうやって生き残ってたのか。スタックは約束のうえで見逃されたって説明があるけど、メアリーは謎が残るよなー。二人がレミックの死後、集合意識みたいなものからどう解放されたのか、生き残ったのか。

とにもかくにも、面白い作品だった。最初はどこでバンパイア・ホラーになるんですか?みたいに観てたけど、単なるホラー・アクションじゃないことに気づいてからは、もう夢中。そして、ラストだよ。60年後にサミーの前に二人が現れるとは…。

そこでのスタックとサミーの行動と語られる言葉たち。これがいい。ちょっと声上げてしまったほど胸をつかれた。「自由」の意味を問い続ける傑作だよ。オスカー候補も納得だ。ライアン・クーグラー監督の他の作品も観たくなった。

罪人たち(2025)
監督:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン, ヘイリー・スタインフェルド, マイルズ・ケイトン, ジャック・オコンネル

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この記事を書いた人

東京在住、50代、5人家族の父。

とにかく映画が好き。
オールタイムベストは『ゴッドファーザー』です。

最近はVODでの鑑賞がメイン。
でもやっぱりスクリーンで観たい。

このブログは、2005年から続けてる映画鑑賞の記録。
「あの映画、いつ観たっけ?」
「面白かったっけ?」
を振り返るために書いてます。

息子を映画好きにする計画、実践中!
映画好き仲間と不定期で映画館に行く「映画部」も活動中!

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