
シリアスな物語で見応えあり!建築家の狂気とパトロンとの複雑な関係を通じて、ホロコーストやユダヤ人迫害、根強い差別、アメリカ資本主義との衝突が描かれる。これがフィクションとは驚き。第一章は時系列で丁寧なんだけど、第二章は展開が早くやや端折りすぎな印象。意図はわかるけどもう少し丁寧に描いてほしかった。エイドリアン・ブロディはオスカー受賞も納得の名演。インターミッション(休憩15分)も新鮮で助かったw
ここからネタバレあり!
主題となる建築様式「ブルータリズム」のむき出しのコンクリートやレンガの力強さ、荒々しさは、主人公ラースロー・トートのキャラクターとも重なるな。バウハウス出身という設定もニヤリだ。やたら鼻ネタが多かったのは、ブロディの大きくて曲がった鼻の自虐なんだろうかw
妻のエルジェーベトは車椅子ながらも心が強くてキャリアもあって、野心や欲望が強めで、ラースローを支えつつ時に導く存在。やたら性欲にまっすぐだったのも印象的。このあたりは、今どきだしフィクションらしい人物像って感じで、かなり狙ってるなーと。
それはそれとして、どうしても第二章の端折りっぷりが気になるんだよなー。
ラースローがハリソンにレイプされたことをエルジェーベトがどこで知ったのか曖昧だし、ジョーフィアが突然話せるようになったのも謎。第三章も急にラースローが老けてて、エルジェーベトは亡くなってるし、礼拝堂が収容所を模してましたって話も唐突すぎて、ちょっと肩透かしだよ。
ブラディ・コーベット監督はインタビューとか読んでると、かなりアート思考が強い人ぽい。そして、今のハリウッドの商業主義にはびこるアルゴリズムを「クソ」だと言い切る姿勢はなかなかのもの。次回作が気になるな。
ブルータリスト(2024)
監督:ブラディ・コーベット
出演:エイドリアン・ブロディ, フェリシティ・ジョーンズ, ガイ・ピアース, ラフィー・キャシディ, ジョー・アルウィン, ステイシー・マーティン