クローネンバーグ監督の世界観が全開で楽しめた。最近の作品はピンとこなかったけど、今作は物語もしっかりしてたしキャストもイイね。人類の進化を探る近未来SFでありアートな作品。しかしビゴ・モーテンセンの存在感が官能的すぎて見惚れるわー。俺もビゴみたいに老けたい。あとアノ椅子ほしい。
ここからネタバレあり!
クローネンバーグ監督は大好きな監督の一人で、古くは『スキャナーズ』『デッドゾーン』『ザ・フライ』、少し前だと『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』とかが話題作だし名作かな。監督作はだいたい観てるけど、個人的には『ビデオドローム』を未鑑賞なのが悔しいところ。
今作は、痛みのない世界。加速進化症候群。新しい臓器。みたいなワードから『裸のランチ』や『クラッシュ』『イグジステンズ』な方向性かと思ってたらそれ以上だった。新しい臓器が生まれる体質?病気?とか、臓器を取り出すパフォーマンスを生業とするアーティストとか、ほんと世界観がブレないよなあ。素敵です。
ビゴ・モーテンセンが枯れてなお放つオーラが圧倒的すぎて惚れる。アラゴルンとはまったく違うけどw。脇を固めるレア・セドゥ、クリステン・スチュワートらの女性陣も素晴らしかった。レア・セドゥの脱ぎっぷりが美しい。
小道具はしっかりクローネンバーグしてた。ソールが寝るベッド、食事用のイス、パフォーマンスに使うサーク。どれも造形が完全にクローネンバーグだったから安心感すら覚えたなー。サークを操縦するコントローラーがまたキモい。個人的にはあのイス(ブレックファスター・チェア)が意味不明で最高!
よくわからなかったのが、ライフフォームの女性二人組。こいつらの意図や背景が意味不明だった。後から調べたところ、要は政府側で進化推進派を暗殺する役割を担ってたってことらしい。なので、途中で殺された闇医者っぽいやつも進化派だったってことか。サークに興奮するシーンとかで賑やかしかと思ってたw
最期、ソールが紫色のチョコバーを口にしてモノクロ映像に切り替わる。恍惚の表情のなか涙を流すラストシーン。ソールは消化できずに死んだのか、それとも進化して消化できるようになったのか。俺は後者だと思ってるけどどうかな。なんかブレックファスター・チェアが止まってたて考察もあったけど、うーん。
ソールは政府側のスパイとして活動してはいるけど、心の奥底では進化を望んでたんだと思ってる。
それはそれとして、この作品が1998年に書かれた脚本で、ほぼ修正なしで撮影されたことに驚きだよ。時代を経ても古びない感性、視点はさすがだなー。そんなクローネンバーグ監督も御年80歳。果たして自作はあるのかな。期待したい。
クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022)
監督:デビッド・クローネンバーグ
出演:ビゴ・モーテンセン, レア・セドゥ, クリステン・スチュワート