最高。アニメならではの絵と音と動きが素晴らしくて漫画原作を忠実に再現というよりアップデートされていた。藤野が手を引いて京本と走るシーンとかいいね。漫画家を目指すふたりの女子の刹那な青春ものでありクリエイターとしての葛藤や覚悟の物語でもあり。ただある事件があるがゆえに人によっては凹むかもしれない。でも確実に胸に迫るし残るものがある。とにかく描くしかないんだよなー。年末滑り込みで観られてほんとに良かった。
ここからネタバレあり!
藤本タツキ自身が「消化できなかったものを無理やり消化するために作った」と語るとおり、この作品には彼自身の思いが色濃く投影されているんだろうな。あれだけの才能と成功は、青春を漫画に全振りしたからこそ得られたものなのかと思うと震えるものがあるな。
藤野が劇中で「何のために漫画を描くのか?」と自問するシーン。答えは明示されないけど、京本に読んでもらいたい、喜んでもらいたいという思いだったんだろうな。京本=読者。「誰かが読んでくれるなら描くしかない」という覚悟。ラスト、京本の部屋で藤野が振り返るとそこにはサイン入りの半纏。泣けるわー。
あと、京アニ事件を想起させる展開や、それに伴うセリフの修正も話題になったけど、最終的に意図した形に戻ったようなので救い。創作の孤独と向き合いながら作品を完成させる作者と編集担当の熱意が伝わってくるな。
映画好きの藤本タツキらしく、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』や『バタフライ・エフェクト』といったオマージュが随所に散りばめられているのも面白い。後者はアニメオリジナルかな。あと、オアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」て曲のタイトルもちらほら出てきて味わい深い。
あらためて藤本タツキの才能に圧倒されるよなー。本作に限らず、『チェーンソーマン』や『さよなら絵梨』でも、漫画を読んでいるはずが映画を観ているような感覚になる。唯一無二の世界観に引き込まれてしまう。とりあえず『さよなら絵梨』は間違いなくアニメ化するだろうなw
ルックバック(2024)
監督 押山清高
出演 河合優実, 吉田美月喜