妻を亡くしても泣けない男の再生の物語。冒頭の夫婦の会話シーンは、幸夫のクズっぷりと2人の“今”がよく分かる名シーン。配偶者の死という重めなテーマだけど、感傷的になりすぎずない淡々とした演出はさすが西川監督だ。夫婦で観るといろいろ気づきがあるかも。16ミリフィルムの柔らかな映像も素敵。
モックン演じる自己愛まみれの幸夫は妻への愛があったのかなかったのか。妻・夏子が死んでも涙どころかそんなに苦しんでるって風でもなかったし。ただ妻が死んだであろう時間に不倫してたって事実にのみ罪悪感を感じてただけのような……。そこらへんが分かりづらいがゆえに最後まで共感できなかったしハマれなかった。いや、クズな男を演じてもモックンはカッコイイんだけどね。
夏子がスマホに残した「もう愛していない。ひとかけらも」の下書きメッセージのインパクトが強くて観終わっても引きずったわー。未送信だったのはまだ気持ちが残ってたからだろうか。きっとそうだろう。そう思いたい。最後トラックで2人を見送るときに、幸夫はなぜ一人残ったのか……。
あと共演の竹原ピストルが意外や良かった。まさに熱演。あとマネージャー役の池松壮亮のセリフも重かったなー。「子育てって、自分がどんなにダメでクズな人間でも帳消しに出来ちゃう、免罪符ですよね。」とか言われると震える。
設定自体は先日観た『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』と似てる。どちらかと言えば残された夫の感情や行動、ラストシーンもふくめて『雨の日は〜』のほうが共感できるかな。
とまあ、いろいろ考えされたけど「自分を大切に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない」という台詞を心に刻み込んでおきたいね。