伝説のジャズマン、チェット・ベイカーの破滅的な半生を描いた自伝的作品。イーサン・ホークの演技が素晴らしすぎる。天才とはいえクスリと女に依存しまくりのチェット・ベイカーがクズすぎてやばい。最後の控室での究極の選択とエンディングまでのイーサン・ホークの演技は完璧だし演出も最高だよ。
とにかくイーサン・ホークの演技が圧倒的で、チェット・ベイカーが憑依したかのような静か熱演に心奪われる。あの憂いを帯びまくった表情と眼力は見てて切なくて切なくて…。
さらに、イーサン・ホークはトランペットを6ヶ月も特訓したらしく、素晴らしい演奏と歌声も披露している。これでオスカーにノミネートすらされないってどうよ!
映像的にも凝っていて、絶頂期だった50年代の回想シーンと作中映画のシーンがモノクロでちょいちょい挿入されるのが実に感傷的で上手い。ポスターも青みがかったモノクロで格好いいぞ。
ちなみに、ベイカーを支え続けた女性・ジェーンは実在しないオリジナルのキャラクターなんだとか。自伝的映画とはいえフィクション要素も多分に盛り込まれてるとはいえ、この配役は絶妙だなぁ。ベイカーの弱さ(クズさ)がが際立つよ。
劇中で演奏される曲はどれも良くて、「My Funny Valentine」もいいんだけど、ラストの曲「I’ve Never Been In Love Before」はマジで泣けた…。本物と声は違うんだけどいいんだよなぁ。サントラ欲しい。
先日観た『マザーレス・ブルックリン』の勢いままにジャズな映画を観たけれど、ちょっと本気でジャズにハマりそうだ。ジャズ漫画「BLUE GIANT」も気になる。…そういえば、マイルス・デイビス役の俳優が本人そっくりだったw
ちょっとネタバレあり!!
自伝的作品でオチが分かってるとはいえ、最後の選択はあまりに切ない。愛よりも何よりも音楽を選んだのか。というか最初から音楽しかなかったんだろうな…。
チェット・ベイカー自身は最後はホテルから謎の転落死(部屋にはヘロインがあったとか)してるくらいだから、生涯クスリと縁が切れることがなかったんだろう。当時のジャズマンはチャーリー・パーカーもそうだけどほとんどクスリ漬けだったらしいしんな。時代とはいえもったいない。
ブルーに生まれついて(2015)
監督 ロバート・バドロー
出演 イーサン・ホーク, カルメン・イジョゴ