実在の殺し屋シーランの無情の半生とアメリカ犯罪史の裏側を描いたスコセッシ監督の集大成。デ・ニーロ、パチーノ、ペシが揃ったマフィア映画ってだけでもう必見だし、3時間30分の長尺が苦にならない仕上がりに脱帽。デ・ニーロ演じるシーランが老境に入ってからの語りがやたらと染みるなぁ……。
物語&演出は、スコセッシ監督の『グッドフェローズ』や『カジノ』と比べると大人しめで淡々としている印象かな。シーラン演じるデ・ニーロは下っ端だから派手なことしないし、ブファリーノの役のジョー・ペシもボスだから寡黙で冷徹なキャラでぜんぜんらしくない。でもその分、ホッファ役のパチーノが怒鳴り散らしまくりの圧力全開でらしさ爆発だったのが嬉しかったw
ホッファ失踪はもちろん、ケネディ大統領就任と暗殺にもイタリア系マフィアが暗躍してたって件はなるほどなぁと唸らされる。あと凄いのが若返りCGだ。デ・ニーロ、パチーノ、ペシは最新の特殊カメラとCG技術で若返った姿で躍動している。
構成としては、3つの時間軸が並行して進んでいく。まず現在時間、年老いた殺し屋フランク・シーランが自分の人生を邂逅する軸。そして、若かりしフランク・シーランがマフィアの一員として成り上がり、ジミー・ホッファの右腕となっていく軸。さらに、ボスのラッセル・ブファリーノとシーランがある目的をもって旅をしている軸。
この3つが絡まりながら進行していくんだけど、そこはさすがスコセッシ監督。時間軸を行き来しながらも迷わせることなく自然に物語を紡いでいく。老練だなぁ。とはいえ、初見だと置いてけぼりになる恐れあり。なぜなら嫁は開始30分で撃沈したからw
嫁いわく、「眠たい。誰が誰だか分からないし、おっさんばっかり。これは男の人向けの映画だよ。私は無理。」とのこと……。まあ確かにそうだけど、裏を返せばマフィア映画好きで男臭い映画好きなら間違いなしってことだ。そいういや、ゴッドファーザーのテーマ曲ぽいのが流れてた。
年老いたシーランの独白。そして「ドアを少しだけ開けておいてくれないか。」て台詞。これはホッファへの贖罪の気持ちからなんだろうか。寂しいなぁ……。
ー アイリッシュマン
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