詠春拳の達人イップマンの伝記ものかと思ったら、八卦掌の女ルオメイと八極拳の男カミソリの3人を軸とした中国武術史ぽい物語だった。アクションはスロモーション&クローズアップ&細かいカットましましの超絶スタイリッシュな仕上がり。がしかし物語は見事にバラバラで、イップ・マンの伝記もの?武術家の覇権もの?イップマンとルオメイの悲恋もの?どっちつかずでわけわからん。ウォン・カーウァイ監督らしいっちゃらしいけどw
ここからネタバレあり!!!
とにかく、3人の話がどれも細切れだしそれぞれ絡みきってないから分かりづらくて盛りあがらない。いきなり10年以上時が過ぎてたりするし。イップマンとルオメイはまだ絡みがあって悲恋ぽい件もあるけど、カミソリにいたってはイップマンと一切絡まずまさに蛇足の極み。なぜこうなった……。
形意拳のマーサンも扱いが非道い。最強の敵役なのにイップマンと闘わないってどういうことだ!マーサンめちゃイップマンを挑発してたやん。最後は二人で死闘するのが王道だやん。それなのにマーサンとルオメイが大晦日の雪降る駅で闘うとかさー。いやかっこよかったけどさー。
もともとは、タイトルどおりイップマンの伝記映画として構想してたらしい。でも撮影開始が遅れて版権が切れてしまい、ドニー・イェンの『イップマン』シリーズが大ヒット。その後なんとか公開されたものの、結果的には伝記映画ではない内容になってたんだとか。
映像美や雰囲気はまさにカーウァイ監督の世界観なんだけど、ツギハギだらけな印象でちょっと残念。久々のカーウァイ監督作品だったけど、2013年公開のこの作品が現時点での最新作なのはびっくりだ。ほんと寡作な監督だな……。
グランド・マスター(2013)
監督:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン, チャン・ツィイー, チャン・チェン, マックス・チャン