オスカー有力作らしいけどいまいちだった。1920年代のアメリカ・モンタナが舞台の西部劇。美しく壮大な映像と台詞少なめな演出は味わい深いけど、物語は地味でありきたりだし「有害な男らしさ」とやらを否定するテーマとかもう面倒くさいわ…。批評家絶賛なるほどねだ。だいたいフィルは言うほど悪党でも冷酷でもない。「残忍な仕打ちを執拗に」とか煽りすぎだし誇大広告だろ。ベネディクト・カンバーバッチの演技は最高だ!
以下、ネタバレあり!
牧場主として輩たちを従え粗野に振る舞うフィル兄さんだけど実はゲイでした。おまけに弟のジョージがかわいくて仕方ない重度のブラコンでした。でもイエール大学出てる秀才です。…ってこれキャラクター盛りすぎだろ?まあそんな複雑キャラをベネディクト・カンバーバッチが見事に演じてるわけだけど。
そもそもフィルはそこまで悪い奴じゃないんだよなー。フィルがしたことって、ジョージの妻・ローズやその息子・ピーターとちょっと距離おいたりちょっと意地悪してたくらいで、とりたてて残忍でもなければ執拗でもなかった。ローズがアル中になるのも自爆みたいなものとしか思えない。
むしろ、フィルはピーターに秘密の場所を知られて以降は優しくなってたしな。それなのに、そこまでの変化を無視していきなり罠にかけて殺されるって流れは説得力に欠ける。確かにフィルはマッチョだけど牧場主として生きていくうえでは仕方のない生き様だったと思うし、最後は「フィルかわいそう!」としか思えなかったw
だいたい罠にはめて殺す件も、もしローズが先住民に皮を渡してなかったら、ピーターの炭疽病計画は無理ゲーだったんじゃないの? その場合は「最後は僕の皮でロープを仕上げてくれ」とでも説得するつもりだったんだろうか?うーん、なんにしても、ピーターは完全にサイコパスだ。亡き実父もこいつが殺したんだろうな。
とにもかくにも、今年のオスカーの有力作ではあるけれど「よくある批評家が絶賛してたから観てみたけどつまらなかった…」てことになる可能性大な作品ゆえ要注意だ。
パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021)
監督:ジェーン・カンピオン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ, キルステン・ダンスト, ジェシー・プレモンス, コディ・スミット=マクフィー