新年一発目は、S・クレイグ・ザラー監督から。いやー最高でしょう!ヤバい!今作も話が動き出すまでに1時間以上かかるけど、一人ひとりの物語を丁寧に描くことで悲哀がマシマシに際立つ演出は健在。メル・ギブソンて配役も最高だし、乾いた空気、ニヤリな会話劇、静かな音楽、引いたカメラ、吹っ飛ぶ頭、もろ出る腹ワタ、どれもリアルだ。たまらん!懐かしいようでいて新しい何とも言えないこの雰囲気、ザラー監督は癖になるなー。
ここからネタバレあり!!!
『デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人』や『トマホーク ガンマンvs食人族』でもそうだったけど、とにかく盛り上がるまでが長い……。物語の幹が動き出すまで一時間はかかるので、生半可な状態で挑むと脱落必至だろう。まあこれがザラー監督の個性でもあるので、ここが楽しめるかどうかが分水嶺かな。俺は大丈夫だけどw
いろいろと衝撃だけど、特に衝撃だったのが銀行襲撃のシーン。育児休暇から復帰した女性が赤ちゃんに後ろ髪ひかれまくりながら、久々に銀行に出勤した途端、無慈悲な強盗に襲われ頭を吹っ飛ばされるという惨劇。もちろん、よくあるシーンではあるんだけど、唐突に「私の赤ちゃん可愛い!可愛いすぎて出勤したくない!でも頑張る!」的な物語が挿入された直後の死亡かつ頭部破壊に衝撃マシマシの状態に。ザラー監督らしいちゃらしいけど…。
最後の銃撃シーン、メル・ギブソン演じるブレット刑事とヴィンス・ヴォーン演じるトニー刑事と戦いぷりも、めちゃめちゃ距離をとりながら時間をかけててリアル。やたらと発砲したり短絡的に突撃とか絶対にしない。これ、ジョン・ウィックなら秒で終わってるだろうなってくらいのシーンなのに、時間かけるかけるw。でもそれがまたリアル。
ラストも予想外の展開でほぼ全滅状態に…。独り生き残ったヘンリーだけど、観終わってかなり深みのあるキャラクターだったなという思いが強い。冒頭、小学生時代の初恋の相手に告白したり、だらしない母親と足の不自由な弟を守ろうとしたり、手に入れた金塊で家族に豪邸を購入したり、ブレットとの約束を守って家族に金塊を送ったり、ほんとは賢くて優しい男なんだろうなー。でも生まれ育った環境ゆえにどうにもならなかったんだろうなー。とか、いろいろと考えさせられた。
あと邦題はどうにもならんかったのか。「ブルータル・ジャスティス」は「野蛮な正義」て意味なんだけど、この映画のどこに正義があるというんだろう?w。確かに、メル・ギブソンとビンス・ボーンの警官2人は職務に忠実だし熱心ではあるけど、物語的にそこじゃないよなーと。まあ、原題の「Dragged Across Concrete」も「コンクリートの上を引きずられて」な意味だから、そのままだと難解なのは分からいでははないけどさ…。
ちなみに、この登場人物、一人ひとりのキャラクターや背景を丁寧に描くスタイルと、それぞれが悲しい事情やどうにもならない状況を背負っている設定って、今話題の『鬼滅の刃』にも通ずるところがあるよなー。鬼滅のキャラクターも鬼殺隊の人と人を喰らう鬼、双方それぞれに悲しい過去があって、人であれば憎んで当然の鬼にもどこか感情移入してしまうところが醍醐味だったりするからね。ただしラスボスの無惨以外はだけどw
ブルータル・ジャスティス(2019)
監督 S・クレイグ・ザラー
出演 メル・ギブソン, ヴィンス・ヴォーン, ドン・ジョンソン