
退役兵と偵察犬の絆の物語。アラスカの大自然の静謐さと過酷さに飲み込まれた。戦場のPTSDに苦しむジェームスとオーディンが、二人でズタボロになりながら生還を目指すシンプルなサバイバル。だからこそ心を締め付けられるし、最後は涙が止まらなかった。老いて枯れたピットもいいけど、何より犬の眼差しにやられたな。兵士と軍用犬への敬意も感じられてよき。とりあえずサバイバルナイフが欲しいし犬も飼いたい。いい映画だ。
ここからネタバレあり!
ピット自身が本作を「サバイバル以上にラブストーリー」と語ってるんだけど、観終わってまさにそれだなと。過酷な旅の皮をかぶった、二人の絆、愛の物語なんだよ。だからこそ心に染みる。
とにかくオーディンがいい。ジャーマン・シェパードの聡明さと献身ぶりに、もう目も心も持っていかれた。演じたのは「ウーバー」という犬で、その息子3頭も撮影に参加してたらしい。エンドロールのピットと犬たちが訓練する映像まで含めて、愛おしい。
犬は高いところと水が苦手だから、激流の上に渡された倒木を歩くのは怖かったんだろうな。妻は「なんで渡れないの」と言ってたけど、どれだけ訓練された犬でも怖いものは怖いんだよ。もしジェームスがあそこで手を骨折してなければ、と思うとあのシーンが大きな分岐点だった。厳しい。
でも、ジェームスが最後に死ぬとは思わなかった。てっきり二人とも救出されるのかと。力尽きるジェームス、二人で見上げるオーロラ、オーディンへ託した手紙。もう涙しかない。
とはいえ個人的に一番好きなのは、序盤30分の悠々自適なキャンプ。誰もいない土地でテントを張り、火を起こし、魚を釣り、酒を飲む。火起こしも地図を広げる所作も、いちいちリアルでかっこいい。荷物をまとめてリュックを背負う仕草ですら様になってる。ああいうの、男心をくすぐるんだよなあ。たまらないよ。
あとは反戦メッセージを声高に打ち出してないのも好感が持てる。よくあるハリウッドの風潮に流されず、本来のテーマに真摯に向き合って作られた作品だと感じた。国のために戦った兵士と軍用犬、その功績と後遺症、そしてその後の暮らしを、丁寧かつ敬意をもって描いている。監督が海軍出身なのもあるんだろうな。
フライフィッシングのシーンは『リバー・ランズ・スルー・イット』を思い出したな。あと、ジェームスが美味そうに飲んでたベルギーのブラウンビールは「シメイのブルー」だろう。久々に飲みたくなった。
ハート・オブ・ビースト(2026)
監督:デビッド・エアー
出演:ブラッド・ピット, J・K・シモンズ, アンナ・ラム, ウーバー(犬)
