壮大。これぞ映画。未開の大自然で太陽光や火だけで撮影された映像美に圧倒される。白人とインディアンというアメリカ史の闇を主人公グラスの復讐劇を通して描ききったイニャリトゥ監督の手腕に脱帽だ。ディカプリオは観てるこっちが「オスカーを!」と願うほどの迫真&ズタボロの演技。受賞して一安心w
レオナルド・ディカプリオはずっとアカデミー主演男優賞を逃してきたけど、ようやく初受賞できてほんとに良かった。もちろん、もっと早く受賞してしかるべきだったと思うけど。正直、この作品のディカプリオほとんど台詞がなくて、ほぼ表情&眼力と息遣いのみの演技。これで受賞ならもっと他の作品で…とは思うものの、まあ結果オーライだw
ちなみに、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督は『バードマン』に続く2年連続での監督賞受賞。エマニュエル・ルベツキは『ゼロ・グラビティ』『バードマン』に続く3年連続での撮影賞受賞。どっちも納得の受賞だし、メキシコ組の勢い凄いなー。
レヴェナントの撮影がいかに過酷なロケだったかは多く語られていて、カナダやアルゼンチでの9ヶ月にわたる撮影、それも太陽の光にこだわったがゆえに、1日のうち実際に撮影できたのは1時間半程度だったとか。そら9ヶ月かかるわw。おまけにマイナス20度を超える環境下でまさに命がけ。もちろんハリウッドだから手厚い福利厚生があったんだろうけど、それにしても凄まじい。
ディカプリオの役作りもこれまた凄まじくて、ヒゲを1年半も伸ばしたり、ベジタリアンなのにバイソンの生レバーに食いついたり、格闘シーンで鼻を折ったり、先住民の言語を習得しちゃったり、ノースタントで熊(CG&ワイヤー)に襲われてみたりと、まさに体当たり演技の数々。本作にかける(もちろんオスカーを狙う)ディカプリオの覚悟と執念がビシビシ感じられるぞ。
ただ、映画のテーマは重い。19世紀前半のアメリカで入植者たる白人とインディアンの闘い。というか虐殺の歴史が背景にあるからね。バイソンの頭蓋骨の山の映像は実際にあったもので、白人が毛皮目当てに乱獲したことはもちろん、敵対していたインディアンの食料を絶つための狙いもあったんだとか。残酷な歴史を象徴するシーンでとても印象的だ。
あと、冒頭から最後までちょいちょいキリスト教の信仰を表すような台詞や映像が入ってくる。ていうかこの作品の芯の部分はキリスト教の信仰にありなんだろう。グラスが夢や幻覚を見る場面もそうだし、最後の復讐シーンもそう。正直、キリスト教的価値観や信仰はよく分からないし理解ができないから、モヤッとするし物足りなさは残ったかな。でもまあこれはやむなしだ。
とにもかくにも、自然は厳しいし熊に襲われた体で生き抜いて念願のオスカーまで獲得したレオナルド・ディカプリオには称賛しかないw
ここからネタバレあり!!!
CGとワイヤーで本物にしか見えない熊に襲われてズタボロの体で旅をするグラスを助けてくれたポーニー族の男が心に残る。彼が言う「復讐は神にゆだねる」という言葉と、肉のおすそ分けや怪我の治療、防風防寒テントなどかいがいしくお世話してくれたいいヤツだったのに、いきなりフランス人に吊るされてしまうという悲劇。
これらが遠因となったのか、最後、殺された息子・ホークの敵を打つべくフィッツジェラルドとの闘いに挑むグラス。ズタボロの体をさらにボロボロにされながらも、やっとの想いで宿願を果たすところまできたのに、自分ではとどめを刺さず、神の手に委ねてしまうというオチ…。
うーん、信仰としてはこうあるべきオチなんだろうし、これがやりたかったんだとは思うんだけど、どうにも腹落ちしないんだよなー。あれほど願った復讐だし我が子の敵なのにそうじゃないだろと…。信仰は難しい…。
レヴェナント 蘇えりし者(2015)
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演 レオナルド・ディカプリオ, トム・ハーディ